分割の際に考慮すべき事情・特別受益
特別受益とは
被相続人の生前に、特別な財産的利益を受けることを「特別受益」といい、「特別受益」を受けた人のことを「特別受益者」といいます。
相続時に遺言により財産を与えられる「遺贈」も「特別受益」になります。
「特別受益」とされるのは、次の3つの場合です。
① 婚姻、または養子縁組のために受けた贈与
② 生計の資本として受けた贈与
たとえば、事業の開業資金、自宅の購入資金、結婚の結納金、特別な学費など、他の相続人とは別に、特別にもらった資金が該当します。
③ 特定の相続人が受けた遺贈
特別受益者の相続分
特別受益を無視して、相続開始時の財産だけで法定相続や指定相続を進めると、相続人の間で不公平が生じることになります。
そこで、特別受益者が受けた財産的利益(特別受益分)を相続財産の前渡しと考え、特別受益者の相続分より減額して計算することになります。
具体的には、相続分を算定するときに、相続財産に特別受益の対象となる贈与財産を加えたものを相続財産とみなし、この財産の合計額に法定相続分または指定相続分を適用した相続分を計算します。
そして、計算された相続分から特別受益者が受けた贈与または遺贈の価額を差し引いた額を、特別受益者の相続分とします。
特別受益者の相続分は次のように計算します
① 相続開始時の相続財産価額+贈与(遺贈)財産価額
② ①×特別受益者の相続分
③ ②-贈与(遺贈)財産価額=特別受益者の相続分
特別受益分が認定された場合の各相続人の相続できる金額
(具体例)
被相続人の遺産2億円、相続人は子A、子B、子Cの3人、分割割合は法定相続分による
子Aに特別受益分が4000万円あったと認定されたケース
① 相続財産に特別受益分を加算して、各相続人の法定相続分で分ける
2億円+4000万円=2億4000万円
・子A 2億4000万円×1/3(法定相続分)=8000万円
・子B 2億4000万円×1/3(法定相続分)=8000万円
・子C 2億4000万円×1/3(法定相続分)=8000万円
② 子Aの相続分から特別受益分4000万円を控除して、各相続人が相続できる金額を求める。
・子A 8000万円-4000万円(特別受益分)=4000万円
・子B =8000万円
・子C =8000万円
合計 2億円
特別受益が相続分より多い場合
特別受益が相続分より多い場合は、遺産分割にあたって取り分がなくなることになりますが、もらいすぎた分を返す必要はありません。
ただし、特別受益分が遺留分を侵害した場合は、侵害された人は、特別受益者に対して遺留分減殺請求ができます。
また、被相続人が遺言などで、特別受益として差し引かないと決めていた場合は、遺留分の規定に反しない限り、それに従うことになります。