遺産分割の方法・代償分割、換価分割

代償分割とは

1人または数人の相続人が価値の高い遺産の現物を相続し、残りの相続人の相続分に相当する超過分を現金で支払う方法を代償分割といいます。

たとえば、相続人が長男と二男の2人で、遺産が土地のみといった場合を想定します。
長男が一人で土地を相続する代わりに、二男には長男が、その土地の価値の2分の1(二男の相続分に相当する金額)の金銭を支払うことを遺産分割協議書で約束する分割方法です。

次のようなケースで頻繁に用いられています。

①相続財産が自宅不動産1件しかない場合
②相続財産の大部分が家業の事業用資産で、特定の相続人が家業を引き継ぐ場合
③相続財産が狭い土地で、細分化すると価値がなくなる場合


上記のようなケースでは、現物分割することは実際には不可能ですので、代償分割が多用されています。

代償分割の問題点

代償分割を実行するには、遺産の全部もしくは大部分を相続した相続人に代償金を支払う資力が必要となります。
代償金を支払うことができなければ、この分割方法は成立しません。

上記の長男と次男が相続人のケースで、土地の価格が3000万円だとすれば、長男は自分の資産から1500万円の現金を捻出して、二男に支払わなければなりません。

代償金が用意できない場合は、換価分割などの方法を検討することになります。
代償金の支払いは一括払いが原則ですが、相続人の合意により支払猶予や分割支払いとすることもできます

換価分割とは

換価分割とは、相続財産の一部、もしくは全部を売却して金銭に換え、この金銭を各相続分に応じて分割する方法です。
換価分割をすれば、相続人同士の公平を図りやすくなるという利点がありますので、現物分割代償分割することが難しい場合などに有効な方法です。

換価分割による売却についての注意点

換価分割による売却に対しても「譲渡による所得税と住民税」がかかってきますので、次のいずれの方法によるのかを慎重に話し合う必要があります。

①1人の相続人が代表して自己の名義に相続登記をしたうえで売却し、売却代金を分配する
②相続人全員の共有名義に相続登記したうえで共同して売却し、それぞれが相続分相当の売却代金を受取る。


①の方法によった場合に、売却代金を分配する行為が贈与に当たるのではとの疑念を抱かれるかもしれません。
しかし、国税庁の質疑応答事例集において、「共同相続人のうちの1人の名義で相続登記したことが、単に換価のための便宜のものであり、、その代金が、分割協議(または調停の内容等)に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。」としています。
したがって、売却手続きなどの都合上、単独名義に相続登記したうえで売却し、売却代金を分配するケースでは贈与とみなされる心配はありません。

上手に手続きを進めれば、譲渡所得税の計算で居住用財産の3000万円控除を複数適用できる場合もありますので、相続登記をする際には専門家の意見を聞くのもよいでしょう。

実際の換価方法は、財産を任意に売却して換金するのですが、家庭裁判所に申し立てて、換価してもらうこともできます。