遺留分とは何か?
Question
先日、父が亡くなりました。相続人は母と私と妹の3人です。私は父の生前に迷惑ばかりかけていましたので、お前には財産を渡さないといわれていました。父の死後に発見された遺言書では、母と妹に全財産を相続させると記載されておりました。遺言書にそう書かれてしまった以上、私は父の遺産を全く相続できないのでしょうか?
Answer
あなたには遺留分がありますので、遺留分減殺請求をすることができます。
遺留分とは
本来、被相続人が、生前所有していた財産については、遺言によって自由に処分することができます。
しかし、被相続人の財産に依存して生活をしている相続人もいますので、このような相続人の生活を犠牲にしてまで財産の処分ができるとすることは、妥当ではないと考えられます。
このような背景から、特定の相続人には、最低限度の相続財産を得る権利が民法によって与えられています。これが遺留分の制度です。
遺留分を有する相続人
遺留分を有する相続人は、子・直系尊属・配偶者です。兄弟姉妹は、遺留分を有しません。
あなたは、子ですので遺留分を有します。
遺留分の割合
相続人全体としての遺留分の割合(総体的遺留分)は、次のとおりです。
①直系尊属のみが相続人である場合→相続財産の3分の1
②その他の場合→相続財産の2分の1
そして、各相続人の遺留分(個別的遺留分)は、相対的遺留分に各自の相続分を乗じた割合となります。
あなたの場合には、上記②に該当し、総体的遺留分は相続財産の2分の1となり、それにあなたの法定相続分である4分の1を乗じた相続財産の8分の1があなたの遺留分の割合となります。
遺留分減殺請求
遺留分を侵害されている相続人は、遺留分を侵害している受遺者や受贈者、あるいは他の相続人に対してその侵害額を請求することができます。これを遺留分減殺請求といいます。遺留分を侵害する遺贈や贈与も当然に無効になるものではありません。遺留分減殺請求権を行使することによって、遺留分を侵害する遺贈や贈与は(遺留分を侵害する限度で)効力を失い、財産は遺留分権利者に復帰するという形になります。
したがって、あなたは母と妹に対して、侵害された相続財産の8分の1の割合につき、遺留分減殺請求を主張して遺留分を取り戻すことができます。
遺留分減殺請求の方式
遺留分減殺請求の方式に特に決まりはなく、必ずしも裁判上の請求による必要はありません。受遺者または受贈者に対する意思表示が相手方に到達したときに効力が生じます。
あなたは、母と妹に対して書面または口頭で遺留分減殺請求する旨を伝えればよいのです。
しかし、裁判外で請求する場合は、後日の証拠のために内容証明郵便によってするのが一般的ですので、内容証明郵便で遺留分減殺請求通知書を送付することを、お勧めします。
遺留分減殺請求権の消滅
遺留分減殺請求権は、短期の消滅時効にかかりますので、注意が必要です。
①遺留分権利者が、相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、遺留分減殺の請求権は時効によって消滅します。
したがって、あなたが遺言書の内容を知った時から1年以内に遺留分減殺請求通知書を内容証明郵便で母と妹に送付してください。
②また、相続開始の時から10年を経過したときも、減殺の請求権は消滅します。