エンディングノートと遺言書

エンディングノートの内容と注意点 

ここ数年、エンディングノートという名の小冊子のような書籍を書店で目にする機会が増えてきました。
つい先日も当オフィスの近くにある吹田市江坂駅の中規模の書店に行ったところ、何種類ものエンディングノートが並んでおり、初老の男性が熱心に内容を確認していました。
遺言書となると身構えてしまう方が多いでしょうが、エンディングノートの場合は、そのネーミングから比較的気軽に書いてみようと思われる方も少なくないのでしょう。

エンディングノートとは日本語に訳せば「最後の覚え書き」となり、自分の人生の記録や、残された人に伝えたい情報などを書き込んで作成するものです。
多くの種類のエンディングノートが発行されていますが、その内容には大差ありません。

①出生からの人生を記録した自分の人生史
②残された人に伝えたいメッセージ
③治療・介護・終末医療に関する要望
④葬儀・法要・墓に関する要望
⑤親族・知人・友人等の住所録
⑥財産に関する情報

といったものが、主な内容となります。
普段は口にすることができなかった大切な人へのメッセージを残すことができ、本人の意思が確認できない終末医療や葬儀・法要の場面で、エンディングノートにより家族は本人の意向を知ることができるので、とても有意義なものだと思います。

しかし、注意が必要なのは、遺言書は財産分与などに法的効力を持つが、エンディングノートは法的効力を持たないということです。遺言書は法的効力を持つがゆえに相続に関する紛争を防止する効力を持つが、エンディングノートは法的効力を持たないので相続に関する紛争を防止する効力はありません
このことが、遺言書とエンディングノートとの決定的な相違点であり、エンディングノートを作成する場合には、それをしっかりと認識しておくことが重要です。

エンディングノートの中には単に財産目録としての記載だけではなく、遺言書のようにどの財産を誰それに残すというような記載をするものもありますが、エンディングノートに記載するだけでは法的効力はありません。エンディングノートとは別に法的効力のある公正証書遺言自筆証書遺言を作成しておく必要があるのです。 

遺言書も同時に作成しよう

エンディングノートを作成する際には、財産に関する情報を書き込んでゆきます。預貯金・不動産・有価証券・保険・負債等の内容を記載するので結果的に財産目録を作成することになります。
この作業は、遺言書を作成するための準備作業と全く同じものです。

せっかく財産目録を作成したのなら、一歩進んで遺言書の作成を考えてみることをお勧めします。ご自分が築いた財産をご自分の意思でその分割方法を決定するのは当然のことです。財産の性質、残される家族の経済状況やこれまでの貢献度などを総合的に判断して、できる限り公平に最善と思われる内容の遺言書を作成すれば、後日の相続に関する紛争を防止することが期待できます

エンディングノートと遺言書を両方作成することにより、残された家族に細やかな心配りを伝えるのと同時に紛争を防止することが可能となるのです。
エンディングノートを作成した方やこれから作成しようとお考えの方は、ぜひ、遺言書も作成して完璧な終活としましょう。