相続税対策に潜むリスクとは!
代表的な相続税対策には、次の3つの方法があります。
①生前贈与等を行い相続財産の絶対量を減らす。
②現金を不動産(収益物件等)に変え、相続財産の評価額を減らす。
③相続税に関する各種の特例の利用や非課税枠を利用する。
どの方法も、適切に行えば節税効果の大きいものばかりですが、リスクを伴うことがあるのも事実です。
生前贈与等を行い相続財産の絶対量を減らす方法に潜むリスク
年間110万円までの贈与税の暦年の非課税枠などを利用しながら、現金・不動産・自社株式などを子や孫に毎年贈与して相続財産を減らす方法が利用されるケースがよくあります。
暦年贈与では、贈与税にご注意!
毎年同額を同時期に贈与していくと、定期金を受ける権利の贈与とみなされてしまい、単年110万円の贈与ではなく、110万円×年数分の贈与金に対して贈与税が課税されてしまう危険性があります。それを防ぐために、毎年、贈与する金額や時期を変更したり、その都度贈与契約書を作成するなどの対策が必要です。
非課税枠の110万円以下ではなく、たとえば120万円を贈与してきっちりとした贈与の証明書(贈与税の申告)を残しておけば、より確実です。
財産を分散させると、思わぬトラブルを招く!
親から子供に毎年「000分の00」といった細かな割合の不動産持分の贈与を行うケースを実務では珍しくありません。
しかし、子供が1人の場合はともかく、節税効果を上げるために複数の子供に贈与を繰り返す場合には問題があります。複数の子供に毎年贈与を行うことにより、親の相続財産は確実に減ってゆき、相続税額は減少してゆきます。
しかし、親の死後にその共有不動産の処分等について子供たちの間で紛争を生じるリスクは少なくありません。共有不動産をどう分けるかについての争いは裁判沙汰になることも珍しいことではないのです。
相続税はいくらか節税できたかもしれないが、その代償として相続トラブルにも似た状況を招く恐れがあるのです。
自社株式の分散は、会社存続の危機を招く!
中小企業の経営者の保有する自社株式は、相続の際に会社の財政状態によっては、高額で評価されることがあります。それゆえ、保有する自社株式の数や評価を減少させることは、効果的な節税対策となります。
相続税対策として、中小企業の経営者が保有している自社株式を生前に複数の親族に毎年贈与して持株数を減少させる方法がよく用いられます。
しかし、この場合にも、共有不動産と同様のリスクが生じます。しかも、自社株式の場合には、いったん争いが生じれば会社経営にも大きく影響し、会社存続の危機を招くことにもなりかねません。
できるだけ早期に長期的な計画を立て、後継者に株式を集中させて経営の安定化を図ることが重要です。
相続税対策で財産を分散させる場合には慎重な検討を!
現金はともかく、不動産や株式は、節税にばかりに気を取られていると、思わぬトラブルを生じる結果になりかねないことは、これまで見てきたことからお分かりいただけたと思います。
このようなリスクがあることを認識して、相続税対策で財産を分散させる際には慎重な検討のもとに行ってください。